2025年施行!300人以下の企業が対応すべき育児・介護休業法改正のポイント

はじめに
Noppo社労士事務所の養父です。2025年4月から、育児・介護休業法が段階的に改正されます。頻繁に行われる育児介護休業法の改正は、一般の方にとってはより分かりづらい制度になっているのではないでしょうか?このブログでは必要最低限何をする必要があるのかを300人以下の企業の対応に絞って解説します。300人を超える企業の方や努力義務も知りたい方は、厚労省のページ等をご覧ください。
全体の概要と流れとして
まず、全体の概要と解説の流れとしては、以下のとおりです。育児と介護が入り混じるため分かりづらいですよね…。
【令和7年4月1日施行:育児分野】
◆子の看護休暇➡利用できる範囲が拡大
◆所定外労働の制限(残業免除)➡小学校就学前までの子まで拡大
◆短時間勤務制度措置➡代替措置にテレワーク追加 ※短時間措置が実施できていれば対応不要
◆テレワーク導入➡努力義務 ※本ブログでは掲載なし
◆育休取得状況の公表➡300人超企業の義務 ※本ブログでは掲載なし
【令和7年4月1日施行:介護分野】
◆新設:介護に直面した旨の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認
◆新設:介護に直面する前の早い段階(40歳等)での情報提供
◆新設:介護両立支援制度等を取得しやすい雇用環境整備の措置
◆介護休暇:勤続6か月未満の労働者も対象
◆テレワーク導入➡努力義務 ※本ブログでは掲載なし
【令和7年10月1日施行:育児分野】
◆新設:育児期の柔軟な働き方を実現するための措置
◆新設:育児期の柔軟な働き方を実現するための措置(両立支援制度等)の個別の周知・意向確認
◆新設:両立に関する事項についての個別の意向聴取・配慮
前回の法改正内容については、こちらをご覧ください。
令和7年(2025年)4月1日施行の内容
子の看護休暇の見直し【義務】
小学校第3学年修了までの子を養育する労働者が申し出たときは、法律により1年間に5日間(子が2人以上の場合は10日間)の子の看護等休暇を与えなければなりません。この休暇は、子供が負傷、疾病、予防接種、健康診断を受ける必要がある場合や、新たに感染症による学級閉鎖、入園(入学)式、卒園式の際にも取得することができます。

※微妙に名称が変わり、「子の看護等休暇」へ
※就業規則で定められるべきものです
※子の看護等休暇は、1日単位または時間単位で取得可能
※労使協定を締結することにより、週の所定労働日数が2日以下の労働者は対象から除外することができます
※今回の改正により、「継続雇用期間が6か月未満の労働者」を労使協定によって対象から除外する規定を撤廃
所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大【義務】
これまで、所定外労働の制限(残業免除)は、3歳未満の子を養育する労働者のみが請求できる制度でした。しかし、改正後は、小学校就学前の子を養育する労働者も対象となります。つまり、お子さんが小学校に入学する前までの期間、残業を免除してもらうことができるようになります。

※就業規則で定められるべきものです
※労働者からの残業免除の請求は、原則として拒否できません。 ただし、事業の正常な運営を妨げる場合は例外的に拒否が認められます。「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当するか否かは、その労働者の所属する事業所を基準として、その労働者の担当する作業の内容、作業の繁閑、代替要員の配置の難しさ等の諸般の事情を考慮して客観的に判断することとなります
※労働基準法第41条第2号に定める管理監督者は、所定外労働の制限(残業免除)の対象外となります。ただし、名ばかり管理職には適用されるため、注意が必要です
短時間勤務制度(3歳未満)の代替措置にテレワーク等を追加【義務】
3歳未満の子を養育する労働者に対する短時間勤務制度が困難な場合の代替措置として、テレワーク等が追加されました。短時間勤務制度を導入できる事業所には影響がありませんので、以下を読む必要はありません。

※テレワーク等は、情報通信技術を利用する業務に限定されません
※実施場所は、自宅を基本としつつ、就業規則で定める場所(サテライトオフィス等)を含みます
※代替措置としてのテレワーク等の措置は、法令上の内容や頻度等の基準は設けられていません
※事業所内でテレワーク等の措置を短時間勤務制度の代替措置として講ずるに当たっては、代替措置の対象となる業務がテレワーク等により実施可能である場合に講ずるものとし、労働者をテレワーク等が可能な職種へ配置転換することやテレワーク等ができる職種等を新たに設けることまでを事業主に求めるものではありません
介護に直面した旨の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認【義務・新設】
仕事と介護の両立を支援し、介護離職を防ぐための重要な改正として、介護に直面した従業員への個別周知と意向確認が義務付けられます。
対象者
対象家族の介護に直面した旨の申出をした労働者 ※日々雇用者を除く
周知事項
以下➀~③のすべての事項を周知する必要があります。
① 以下の各制度内容
・介護休業に関する制度
・介護休暇に関する制度
・所定外労働の制限に関する制度
・時間外労働の制限に関する制度
・深夜業の制限に関する制度
・所定労働時間の短縮等の措置
② 介護休業・介護両立支援制度等の申出先(例:人事部など)
③ 介護休業給付に関すること(例:制度の内容など)
情報提供の方法
①面談(オンライン面談可) ②書面交付 ③FAX ④電子メール等 のいずれか
※③,④は労働者が希望した場合に限る
意向確認
従業員が仕事と介護の両立についてどのような意向を持っているかを確認します。
・就業継続の意向
・利用したい制度や措置
・働き方に関する希望(勤務時間、勤務場所など)
・介護の状況
妊娠・出産等申出時、個別周知・意向確認書記載例(必要最小限事例)
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介護に直面する前の早い段階(40歳等)での情報提供【義務・新設】
事業主は、従業員が介護に直面する前の早い段階で、仕事と介護の両立支援に関する情報提供を行うことが義務付けられます。将来に備えて、どのような制度があるのか、いつ、どのように情報提供が行われるのかを確認しておきましょう。
対象者(情報提供期間)
①労働者が40歳に達する日(誕生日の前日)の属する年度(1年間)
②労働者が40歳に達する日の翌日(誕生日)から1年間 のいずれか
※日々雇用者を除く
情報提供事項
以下➀~③のすべての事項を周知する必要があります。
① 以下の各制度内容
・介護休業に関する制度
・介護休暇に関する制度
・所定外労働の制限に関する制度
・時間外労働の制限に関する制度
・深夜業の制限に関する制度
・所定労働時間の短縮等の措置
② 介護休業・介護両立支援制度等の申出先(例:人事部など)
③ 介護休業給付に関すること(例:制度の内容など)
情報提供の方法
①面談(オンライン面談可) ②書面交付 ③FAX ④電子メール等 のいずれか
※③,④は労働者が希望した場合に限る
介護両立支援制度等を取得しやすい雇用環境整備の措置【義務・新設】
介護休業や介護両立支援制度等※を従業員が円滑に利用できるよう、事業主には雇用環境整備の措置を講じることが義務付けられました。具体的に、事業主が講じるべき雇用環境整備の措置は、以下のいずれかとなります。
※介護休暇、所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限、介護のための所定労働時間の短縮等の措置
①介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施
②介護休業・介護両立支援制度等に関する相談体制の整備(相談窓口設置)
③自社の労働者への介護休業・介護両立支援制度等の取得事例の収集・提供
④自社の労働者への介護休業・介護両立支援制度等の取得促進に関する方針の周知
②か④が実施しやすいと言えるでしょう。
介護休暇を取得できる労働者の要件緩和
介護休暇の取得要件が緩和されます。労使協定による継続雇用期間6か月未満の除外規定が廃止され、週の所定労働日数が2日以下」の労働者のみ、引き続き労使協定で除外可能です。これにより、入社6か月未満の従業員も介護休暇を取得可能となります。

令和7(2025)年10月1日から施行
育児期の柔軟な働き方を実現するための措置(義務・新設)
・事業主は、3歳から小学校就学前の子を養育する労働者に関して、以下5つの選択して講ずべき措置の中から、2つ以上の措置を選択して対策をとる必要があります。また、事業主が対策をとった措置を選択する際、労働者の過半数代表者からの意見聴取の機会を設ける必要があります。
【選択して講ずべき措置(両立支援制度等)】
労働者は、事業主が対策をとった以下の措置の中から1つを選択して利用することができます。
① 始業時刻等の変更
フレックスタイムの制度 、始業又は終業の時刻を繰り上げ又は繰り下げる制度(時差出勤の制度)
② テレワーク等(10日以上/月)
③ 保育施設の設置運営等(ベビーシッターの手配および費用負担など)
④ 就業しつつ子を養育することを容易にするための「10日以上/年の養育両立支援休暇」の付与
養育両立支援休暇については、労務を提供していないため無給でOK。もちろん、法を上回る措置として有給もOK。
⑤ 短時間勤務制度
※②と④は、原則時間単位で取得可とする必要があります。
育児期の柔軟な働き方を実現するための措置(両立支援制度等)の個別の周知・意向確認(義務・新設)
3歳に満たない子を養育する労働者に対して、子が3歳になるまでの適切な時期に、事業主は上記「育児期の柔軟な働き方を実現するための措置(両立支援制度等)」として選択した制度(対象措置)に関する以下の事項の周知と制度利用の意向の確認を、個別に行わなければなりません
※個別周知と意向確認は、対象措置の申出が円滑に行われるようにすることが目的であり、取得や利用を控えさせるような形(取得の申出をしないように威圧する、申し出た場合に不利益をほのめかす、取得の前例がないことを強調するなど)で行ってはいけません。
対象労働者(周知の時期)
子が3歳の誕生日の1か月前までの1年間(1歳11か月に達した日の翌々日から2歳11か月に達する日の翌日まで)である労働者
周知事項
①対象措置の内容(柔軟な働き方を実現するための措置のうち2つ以上)
②対象措置の申出先(例:人事部など)
③所定外労働の制限(残業免除)に関する制度、時間外労働・深夜業の制限に関する制度
個別周知・意向確認の方法
①面談(オンライン面談可) ②書面交付 ③FAX ④電子メール等 のいずれか
※③,④は労働者が希望した場合に限る
仕事と育児の両立に関する個別周知・意向確認の全体像のうち、今回の見直しはどこに該当するか?
前回の法改正で妊娠・出産の申出をした労働者に対して、事業主は育児休業制度等に関する個別周知・意向確認(薄い水色部分)が義務付けられました。今回の法改正で義務付けられたのは矢印(濃い青色)で示した部分です。

両立に関する事項についての個別の意向聴取・配慮(義務・新設)
事業主は、労働者が本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出た時や、労働者の子が3歳になるまでの適切な時期に、子や各家庭の事情に応じた仕事と育児の両立に関する以下の事項について、労働者の意向を個別に聴取し、聴取した意向について配慮する必要があります(就業条件に関する個別の意向を確認するために行うもの)。
対象労働者(意向聴取の時期)
①本人または配偶者が妊娠・出産等の申出をした労働者
②子が3歳の誕生日の1か月前までの1年間(1歳11か月に達した日の翌々日から2歳11か月に達する日の翌日まで)である労働者
聴取内容
①勤務時間帯(始業及び終業の時刻)
②勤務地(就業の場所)
③両立支援制度等の利用期間
④その他仕事と育児の両立の支障となる事情の改善に資する就業の条件
意向聴取の内容
①面談(オンライン面談可) ②書面交付 ③FAX ④電子メール等 のいずれか
※③,④は労働者が希望した場合に限る
仕事と育児の両立に関する個別周知・意向確認の全体像のうち、今回の見直しはどこに該当するか?
今回の法改正で義務付けられたのは矢印(濃い青色)で示した部分です。
-妊娠出産を申し出たとき、子が3歳の誕生日の1か月前までの1年間である労働者.png)
さいごに
2025年4月と10月の法改正の全体像は以下のとおりです。これを最初に見せられても頭に入りづらいとは思いますが、上記記事を読んで頂ければ、ある程度は内容も頭に入ってくるのではないかと思います。冒頭でお伝えしたとおり、努力義務(テレワーク等)の内容は盛り込んでおりませんのでご承知おきください。

育児介護休業法については、改正に次ぐ改正で本当に分かりづらいというか、ややこしいですよね。300人以下で義務付けされたもののみと限定はしましたが、それでもわかりづらいと思います。専門分野とはいえ、「あれ?前回の法改正はどのような内容だっけか?」みたいな状態になりますしね・・・。実務担当をされている方の少しでも参考なれば幸いです。
厚労省リーフレット(ポイント解説)
厚労省リーフレット(詳細解説)
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