代休と振替休日について・前編

繁忙期やトラブルなどによって業務がひっ迫し、休日に出勤して仕事をしなければならない…という状況は少なくないと思います。

休日に労働した場合、代わりに他の労働日を休日にするという対応は一般的で、その休日のことを「代休」や「振替休日」と呼びますが、この2つ違いをご存知ですか?
あまり区別することなく運用されてしまっていることもある「代休」と「振替休日」ですが、実はこの二つ、似て非なるものです。

「代休」と「振替休日」について、前編・後編でご説明いたします!

まず大前提の「休日」とは?

労働基準法では、使用者は労働者に「少なくとも毎週1日の休日を与えなければならない※変形休日制を採用している場合は4週間を通じて4日以上」と定められています。この労働者に最低限与えなければならない休日のことを「法定休日」と言います。

労働基準法で「休日」という言葉が指すのは「法定休日」のことです。そのため「休日労働」とは法定休日に働くことを意味します。

法律で定められた「法定休日」の他に、会社の就業規則などで使用者が独自に定める休日のことは「法定外休日」「所定休日」と呼ばれます。

そのため、会社の休日に労働した場合でも、それが「法定外休日(所定休日)」であれば法律上の休日労働には該当しません
法定外休日に働いたことで、その週の労働が週40時間を超えた場合は「時間外労働」になります。

例えば、法定休日は日曜日・法定外休日は土曜日と定めている会社の場合

・日曜日に働いた場合
 →法定休日の労働なので「休日労働」休日労働の割増率は35%以上

・土曜日に働いた場合
 →法定外休日の労働なので「時間外労働」時間外労働の割増率は25%以上
  ※ただし、週の途中に祝日など他の法定外休日があり労働時間の合計が週40時間以下の場合は割増賃金を支払う必要はありません。

つまり「休日に働いた」といってもそれが「法定休日の労働」なのか、「法定外休日の労働」なのかで、まったく意味合いが異なるということです。

法定休日の決め方

先ほどの例のように「法定休日は日曜日とする」など、就業規則で法定休日を特定している会社もありますが、法定休日の特定は法律上の義務ではありません。

法定休日を定めていない場合は、日曜日を起算とした1週間のうちどの曜日でも法定休日になり得ます
※週の起算日は就業規則で決めることができます。特段定めがない場合は日曜日が起算日となります。

例えば・・・
下図のように日曜日から金曜日まで勤務し、土曜日が休みの場合は「土曜日を法定休日」にすることができます。

下図の場合は、日曜日から水曜日まで勤務、木曜は休み、金曜日と土曜日も勤務なので「木曜日を法定休日」にすることができます。


つまり1週間で1日の休みを確保できていれば、その日を「法定休日」とすることができるということです

では、日曜日と土曜日が休日で、法定休日が定められていない会社の従業員が、日曜日から土曜日まで7日間連続で働いた場合は何曜日の労働が「休日労働」に該当すると思いますか?

【法定休日が特定されていない場合で、暦週(日~土)の日曜日及び土曜日の両方に労働した場合は、 当該暦週において後順に位置する土曜日における労働が法定休日労働になる】と厚生労働省の「改正労働基準法に係る質疑応答(平成21年10月5日)」に掲載されています。

後順の土曜日が「法定休日」となるため、土曜日の労働については「休日労働に対する割増(35%以上)」が必要です。
また、法定外休日である日曜日に勤務したことで、週の労働時間が40時間を超えていますので、日曜日に働いた8時間分については「時間外労働に対する割増(25%以上)」をして賃金を支払わなければなりません。
※これは週の起算日が日曜と定められている、または週の起算日が決められていない会社の場合です。就業規則で月曜を週の起算日と定めている会社の場合は、後順は日曜になりますので、法定休日は日曜日になります。

代休と振替休日

土曜日と日曜日が休日の会社で働いているAさんを例に…

Aさんの会社は、就業規則で法定休日および週の起算日は日曜日と決められています。
△月は繁忙のため、日曜日にも出勤しなければならなくなりました。他の労働日と休日を入れ替えたいと思うのですが…

他の労働日を休みにする場合、下記のようなケースが考えられます。

①日曜日に出社し仕事をした後に、同一週の火曜日を休みにした。
②前の週の金曜日の時点で日曜日に出社することが確定したので、事前に翌週の火曜日と休日を入れ替えた。

①も②も休日の日曜日に働いて、その週の火曜日を休む、という事に変わりはありませんが大きな違いがあることにお気づきですか?

大きな違いとは働いた後に休みを決めたのか事前に休みを決めてから働いたのかという部分です。

この違いが、今回のメインテーマである「代休」と「振替休日」の違いです。

①と②の違いをあまり明確にせず、どちらも同じ意味合いで運用してしまっている会社もありますが、実は大きな差がありますので注意が必要です。

代休

代休とは「休日労働が行われた後に、その代償として以後の特定の労働日を休みとすること」です。
先ほどの例で言えば①が「代休」に当てはまります。

ここで重要なのは【働いた後に休みを決めている】点です。つまり、先に休日労働をしているので、あとから他の労働日を休みにしたとしても、休日労働をした事実が消えるわけではない=休日労働に対する割増賃金が必要 という事になります。

この場合、日曜日に働いた8時間分の賃金は発生しますが、代休になった火曜日(8時間分)の賃金は発生しませんので、結果的に相殺が可能です。ただし、法定休日に働いた「休日労働に対する割増部分のみ(割増率35%以上)」を支払う必要があります。

ちなみに…休日労働した労働者に対して、代休を与えることは法律上の義務ではないため、休日労働をしたからといって必ずしも代休を与える必要はなく、休日労働した分の賃金(つまり135%の賃金)を支払えば問題ありません。

振替休日

振替休日とは「あらかじめ休日と定められた日を労働日とし、その代わりに他の労働日を休日とすること」です。
先ほどの例で言えば②が「振替休日」に当てはまります。
ここで重要なのは【事前に休みを決めてから休日労働している】点です。


これにより、法定休日(日曜日)が「労働日」に、そのかわりとして振り替えられた日(火曜日)が「法定休日」になります。法定休日と労働日をトレードするというイメージです。

そのため、もともと法定休日だった日曜日に働いたとしても、通常の労働日に働いているのと同じですので、休日労働に対する割増賃金は必要ありません。

前編では「代休」と「振替休日」の違いについてご説明しました。
休日に労働し、他の労働日を休日にする、という部分が似ているため、違いを明確にせずに運用してしまうケースが多いのですが、今回ご説明した通りこの二つは似て非なるものですので注意が必要です。

後編では【代休や振替休日を設定する時の注意点】についてお伝えいたします!

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