「人を変える」幻想を捨て、適材適所を実現するための思考法

Noppo社労士事務所の養父です。

人への正しい認識がなければ、いつまで経っても対人関係の悩みから解放されることはありません。

私自身も長い間、正確に捉えることのできなかった「人の性格の変化」に焦点を当ててみたいと思います。

「人の性格を変えること」はできるのでしょうか?

私は「人の性格は変わる」と強く思い込んできた中の一人だと思います。

しかし、この仕事(人のコンサル業務)をしていると、「人の性格は本当に変わらないな・・」と思うようなことばかりです。

今の私の認識で言えば、「原則、多くの“成年に達した人”は大事な部分を変えることができない」に落ち着いています。

自分を変えたいと思っている大人や社員に変わってもらいたいと思っている経営者や管理者にとっては身も蓋もない話になってしまうかもしれませんが、「人を変えることがなぜ難しいのか」を知ることは、マネジメントスキルを向上させるキッカケとなります。

では、なぜ、人は性格を変えることができないのでしょうか?

それは、「その人の年を重ねてきた年数がその人自身を形成しているから」です。

20年30年と積み重ねてきた意識というのは早々に変化させることができるものではなく、単発的な取り組み(分かりやすいもので言えば、短期間の研修など)では簡単に引き戻されてしまいます。

しかし、そのような中でも、地道に、強い意志を粘り強く持続させていく中で、やがてそれが、己の意識となっていくということはあると思います。

ただ、それは、自分自身が自分の変えたい部分(自分が弱点と思う性格など)を理解し、認識し、変えたいと強く願い、元の意識との闘いがこれまで積み重ねてきた年数以上に必要であるはずです。

当然、並大抵の努力でできることではありませんし、他人がどうこうできる話ではありません。

人間力向上や意識改革を謳った類の研修(うさんくさい!と薄々感じていたあなたは正解です!私はかなり騙されるタイプで、数々の失敗をしてきています…)で変えられるものでは当然ないですし、他人がどうこうすることになれば、一歩間違えればハラスメント(嫌がらせ)にも繋がり、労使トラブルに発展する可能性もあります。

「人を変えたい」ということは、「その人のありのままを認めていない」ということ

人を変えたいと思う心理は、変えたい側にとっては、その人のことを思い「期待を込めて」ということかもしれません。

しかし、正しい解釈としては「その人のありのままを認めていない(肯定してあげない)」ということになります。

多くの人は、「自分を認めてもらいたい」という承認欲求を持っていますので、相手方は「自分を否定されている」と捉えることになります。

中には「自分のために言ってくれている」と思ってくれる方もいるかもしれません※。

しかし、それも一定の限度を超えると「恨み」に転化しかねません。

「なぜ、ありのままの自分を認めてくれないの?」と。

ただ、経営者側にも言い分はあります。

「ありのまま」を認めると、求める生産性に到達しないからです。

これはお互い不幸になる図式でもあり、いつまで経っても平行線です。

※このように捉えてくれる人は、まだ心が強い人です。多くの方が注意・指導をしても、「ムッとした顔をされた」、「言い訳ばかりをされた」、最悪は「逆切れされた」という経験を持っていて、無神経な人でない限り、人に注意・指導をすることには精神的負担が伴うはずです。

人の力を最大限に発揮するためには、「人の見極め」を適正にできること

マネジメントをする方々にお伝えしたいことは、人と向き合うにあたって、「人を変える」ことよりも、「人を見極める」ことに注力し、いかにその人の力を最大限発揮できるポジションに就かせることができるか否か(いわゆる適材適所)が、組織の生産性を左右する大きな要因になるということです。

もし、「組織内に就かせるポジションがない」という人がいれば、それは「採用の失敗」を意味することになり、その人のマネジメントは非常に舵取りの難しいものになります。

なぜなら、「任せる仕事がない」=「まともにできる仕事はない」ということであり、一切目を離せなくなってしまうからです。

また、目を離してしまうと、対人場面や業務処理の場面で以下のような問題が頻発し、組織に及ぼす影響は甚大です。

・顧客からのクレームに繋がる
・まともな顧客が流出する要因を作る
・他の社員が尻ぬぐいをしなければならなくなる
・それが原因で他の社員が過重労働になり、辞める原因となる
・書類作成を業務として求めていれば、その書類の第三者による見直しが必要になる などなど

問題の影響を少なくするために、対人場面の少ない業務に異動させることができれば良いのですが、中小企業ではマルチタスクが当たり前であり、どうしても影響を抑制することができません。

つまり、雇用している限りは、綱渡りのような危ういバランスのもとに組織運営をすることになります。

「人は変わる」と思いたいですよね。でも・・

人を変えたい、という気持ちは痛いほど分かります。

実際、私自身も人を変えようともがいていた時期もありました。

しかし、振り返ってみれば、そのどれもが徒労に終わったように思いますし、相手への認識不足や変わらないものを変えようとする己の傲慢さに原因があったように思います。

また、ドラマや漫画などでも、人が変わっていく様が描かれるのを見たり読んだりすると、「人は変われるのではないか?」と勘違いもしやすくなります。

私もそういう類のものが大好物だったりしますので・・。

「人の性格って変わらないよね・・」とイメージしやすくするために、身近な人で、接点を持ったときに何かしらの「不快感を感じる人」を一人思い浮かべてください。

立場上、貴方が常に我慢を強いられているというケースもあると思いますが、貴方が不快に感じたことにより、我慢の限界に達したときは、何度か言い争いにもなったのではないでしょうか?。

そのあと、その人(身近な人)は貴方の言い分を認めて変えようとしましたか?

もしくは、変わりましたか?

「変わった」のなら、とても幸せなことだと思います。その人を今後も大切にするべきです。

何より、貴方との関係性を持続させるために、自分を否定してまで、自分を“制御”し、変えよう・変わろうとしているのですから。

しかし・・・、多くの人は変化がないことに腹を立てつつ、もしくは、諦めつつ「我慢しながら(離れるわけにもいかない理由があるから)仕方なく付き合っている」のではないでしょうか。

不幸な関係性を1つでもなくすために・・

以前、私がある会社で人事評価制度構築プロジェクトを推進していた際、今後を担う人材に「人の性格は変わると思いますか?」という質問を投げかけたことがあります。

そのとき、女性全員の回答が「人の性格は変わらない」という超現実的なものでした。

逆に男性のほうが、「人の性格は変えていける」と思い込んでいる方が多く、この現実感の無さが世のハラスメントを引き起こす要因の1つになっているとも感じます。

「人の性格を変えることは原則としてできない」と認識していれば、男女であれば、結婚を検討するときに、「私(僕)の愛で何とかする」などのような世迷言は考えないで冷静に判断できるようになるでしょうし、採用であれば、「問題があっても、当社の人材育成で何とかなる」なんて費用対効果の低過ぎる無謀で不幸なチャレンジをしようとはせず、「応募者をもっと慎重に見極めねば!」と思うようにもなり、杜撰だった選考方法を見直すことに繋がるかもしれません。

「人間の悩みはすべて対人関係の悩みである」とアドラー心理学では言っていますが、「人の性格は“ほぼ”変わらない」という認識が欠けているからこそ、“適切な判断”ができず、人の悩みは尽きないのだと思います。

人を見極める技術を知りたい方は以下のページをご参照ください。

人的リスクを極小化し、優秀な人材の獲得を実現していく採用選考手法(アセスメントセンター)について

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