【令和8年10月改正】同一労働同一賃金・パートタイム有期雇用労働法関連の法改正

Noppo社労士事務所のHottaです。

令和8年10月1日より、パートタイム・有期雇用労働法に関連する省令(施行規則)、雇用管理指針、ならびに「同一労働同一賃金ガイドライン」が改正・施行されます。

今回の法改正は、同一労働同一賃金の施行から5年が経過したことによる見直しや、近年の最高裁判所における判例を踏まえたアップデートです。企業には、従来の対応状況を再点検し、新たなルールに則った運用へ移行することが求められます。

今回のブログでは、法改正によって企業に求められる対応について解説していきます。

1. 雇入れ時の労働条件明示事項の追加

パート・有期雇用労働者を雇い入れる際、これまでは次の4項目を書面で明示することが義務付けられていました。

・昇給の有無
・退職手当の有無
・賞与の有無
・相談窓口

令和8年10月1日以降は、これらに加え、新たに「待遇の相違等に関する説明を求めることができる旨」を労働条件通知書等に記載し、書面で明示することが義務化されます。
※この書面明示を怠った場合、10万円以下の過料に処される可能性があります。

~労働条件通知書の修正が必要です!~

雇入れ時に使用している「労働条件通知書」や「雇用契約書」のひな形に、「正社員との待遇の相違内容やその理由について説明を求めることができます」といった説明請求権に関する条項を追加しましょう。令和8年10月1日以降に新たにパート・有期雇用労働者を雇い入れた際は明示が必要です(10月1日以降の契約更新も同様です)。

出典:『同一労働同一賃金ガイドライン等の改正内容について(パートタイム・有期雇用労働法関連)』(厚生労働省)

2. 同一労働同一賃金ガイドラインの改正

最高裁判所の判例等を踏まえ、正社員とパート・有期雇用労働者との間で、不合理な待遇差を設けることが禁止されています。今回の改正により、以下の手当や休暇制度などが不合理な待遇差の禁止対象として明示的に追加・充実化されました。

改正ガイドラインで明示された項目

賞与・退職手当(記載の充実・新規追加)

賞与・退職手当の性質や目的(労務の対価の後払い、功労報償等)がパート・有期雇用労働者にも該当する場合、正社員との間の職務内容や責任等の違いに応じた「均衡のとれた内容」の支給を行わなければ、不合理な待遇差と判断される可能性があることが明記されました(※退職手当については今回ガイドラインに新規追加されました)。

無事故手当(新規追加)

正社員と業務内容が同一のパート・有期雇用労働者には、同一の無事故手当を支給しなければなりません。

家族手当(新規追加)

契約更新を繰り返しているなど、相応に継続的な勤務が見込まれるパート・有期雇用労働者には、同一の家族手当を支給しなければなりません。

Warning

 「相応に継続的な勤務が見込まれる」とはどういうことか?と思われるかもしれません。実際、今回の改正にあたって具体的な勤続期間が示されたわけではなく、各会社の判断に任されている状態です。そのため、無期転換ルールのある、5年を超えて継続雇用していることを目安にするなど、自社の契約更新の運用に沿った一定の基準を会社として設けるとよいでしょう。

住宅手当(新規追加)

転居を伴う配置変更の有無に応じて支給されるものである場合、正社員と同一の転居を伴う配置変更があるパート・有期雇用労働者には、同一の住宅手当を支給しなければなりません。

福利厚生施設(記載の充実)

パートタイム・有期雇用労働法(第12条)で利用機会の付与が義務付けられている「給食施設、休憩室、更衣室」の3施設に留まらず、それ以外の施設(物品販売所、駐車場、保養所などすべての福利厚生施設)についても、利用を認める場合の「利用料金や割引率等の利用条件」について、パート・有期雇用労働者との間で不合理な待遇差を設けてはならないことが今回のガイドライン改正で明確化されました(※各施設における具体的な利用便宜の供与、すなわち利用できるようにするための配慮自体は、後述する「雇用管理指針」にて配慮義務として追加されています)。

病気休職・休暇(記載の充実)

正社員に病気休職中、給与の保障を行う場合には、労働契約の更新を繰り返している等、相応に継続的な勤務が見込まれるパート・有期雇用労働者にも正社員と同一の給与の保障を行わなければなりません。

夏季冬季休暇(新規追加)

正社員に付与している場合、パート・有期雇用労働者にも同一の夏季冬季休暇を付与しなければなりません。

Warning

 一日の労働時間が短かったり、週の労働日数が短かったり、フルタイムではない非正規労働者についても、正社員と同様の休暇を付与しなければならないのか?という疑問があるかもしれません。これについてQ&Aでは「待遇の性質及び当該待遇を行う目的が所定労働時間の長短にかかわらず妥当するか否か等の観点から検討し、決定することに」なるとしています。まずはその待遇目的性質整理したうえで、結果的に所定労働時間(日数)に応じて付与する日数が変わったとしても、直ちに違法と判断される可能性は低いと考えられます。

褒賞(新規追加)

一定の期間勤続した労働者に対して授与される褒賞(永年勤続表彰等)について、通常の労働者と同一の期間勤続したパート・有期雇用労働者には、同一の褒賞を授与しなければなりません。

定年後継続雇用の有期雇用労働者の取り扱いについて

定年後に継続雇用された有期雇用労働者もパート・有期雇用労働法の適用を受けるため、正社員との待遇差がある場合、その差が不合理なものであってはいけません(定年後継続雇用されたという理由のみをもって、合理的な待遇差と認められる訳ではありません)。

旧ガイドラインでは、元々「基本給」の項目に注意書きとしてのみ記載されていましたが、今回の改正で項目として独立し、賃金のみならず待遇全般に関わる内容であることが明確化されています。

無期雇用フルタイム労働者について

無期転換ルールにより無期雇用となった労働者のうち、フルタイム労働者にはパート・有期雇用労働法が適用されません。そのため、今回の法改正では、無期転換後のフルタイム労働者にもガイドラインの趣旨を考慮した労働契約を締結し、考慮した事項を当該労働者に説明するよう努めることを求めています。

~不合理な待遇差がないか点検しましょう~

以下のステップで自社で不合理な待遇差がないかを確認し、ある場合は解消に向けて動くことで、改正ガイドラインへの適合を進めましょう。

ステップ1:自社待遇の「棚卸し」と「目的」の整理
自社で現在支給しているあらゆる手当、休暇制度、福利厚生をすべて洗い出し、それぞれの制度が「どのような目的や性質(例:長期の定着促進、実費補填、功労への労いなど)」で設けられているか、制度趣旨を整理・確認します。

ステップ2:正社員との「待遇差」および「理由」の精査
正社員とパート・有期雇用労働者の間に、それらの待遇において「差があるか」をチェックします。差がある場合には、職務内容、責任の程度、配置変更の範囲(いわゆる働き方の違い)に照らして「不合理な差になっていないか」を個別に精査します。

ステップ3:ガイドラインに沿った待遇変更
精査の結果、不合理な差があると判断された手当や休暇について、支給要件の緩和や対象者の拡大、休暇制度の統一などの改善措置を講じます。正社員の労働条件を不利益に変更することで差を縮めるのではなく、パート・有期雇用労働者側の雇用管理の改善や待遇改善(引き上げ)を図ることが求められます。

Warning

 今回のガイドライン改正では、待遇差の理由として「正社員人材の確保や定着を図る」という目的があったとしても、その目的だけで合理的な待遇差と認める訳ではない、としています。ただし、この目的を理由としてはいけない訳ではなく、「将来への期待」や「人材の確保」といった抽象的な内容のみを理由とせずに、あくまでも手当の目的・性質も含めて待遇差の理由を検討する必要があるということです。

これまで、単に「正社員だから」「パートだから」と待遇を変えていた会社も多いと思います。今回を機に、雇用形態によってどのような差があるのか(同じ職務でも責任や権限に違いがあるのか)、手当や休暇の支給・付与目的は何かを整理し、労働者にきちんと説明できるよう体制を整えましょう。

3. 雇用管理の改善等に関する措置内容の変更(雇用管理指針)

今回の法改正に伴い、厚生労働省が定める「雇用管理指針(短時間・有期雇用労働者雇用管理指針)」の措置内容も新しくなりました。

雇用管理指針の変更点

① 職業能力開発促進法の適用

事業主は、労働者に必要な職業訓練を行うとともに、労働者が自ら教育訓練等を受ける機会を確保するために必要な援助等を行うよう努めなければならないと、職業能力開発促進法で定められています。
この職業能力開発促進法がパート・有期雇用労働者にも適用されることを認識し、遵守しなければなりません。

② 公正な評価に基づく賃金決定

パート・有期雇用労働者の賃金を決定するにあたり、職務内容や成果、意欲、能力、経験等を公正に評価して昇給等に反映するなど、公正な評価に基づき賃金を決定することが望ましいとされています。評価制度の透明性を確保し、パート・有期雇用労働者のモチベーション向上を図ることが推奨されます。

③ パートタイム・有期雇用労働者の過半数を代表する者の要件等

就業規則の作成・変更時に意見を聴く「パート・有期雇用過半数代表者」の選出に関して、次のことに留意することとされています。

(1)選出
代表者は、管理監督者でないこと、民主的な手続き(投票、挙手等)で選出されたこと、かつ事業主の意向に基づき選出された者でないことが必要です。
(2)不利益取扱いの禁止
過半数代表者として正当な行為をしたこと等を理由とした、解雇その他の不利益な取扱いをしてはなりません。
(3)事務を円滑に行うための配慮
過半数代表者がその事務を円滑に遂行できるよう、「事務スペースや事務機器(PCやコピー機など)の提供など、必要な配慮」を行わなければなりません。

④ 福利厚生施設の利用に関する便宜の供与

パートタイム・有期雇用労働法(第12条)により、給食施設、休憩室、更衣室については正社員と同一の利用機会を与えることが義務化されていますが、それ以外の施設についても配慮が必要となります。

対象施設

物品販売所、病院、診療所、浴場、理髪室、保育所、図書館、講堂、娯楽室、運動場、体育館、保養施設、駐車場 など

正社員との不合理な差を設けていない場合でも、パート・有期雇用労働者に対しても利用の便宜を供与するよう配慮しなければなりません。

⑤ 正社員転換推進措置の実施方法等

パートタイム・有期雇用労働法(第13条)には、正社員への転換を推進するため、講じなければならない措置が定められていますが、その措置を実施する際に次の2点に留意することとされました。

  • 契約更新時の面談やメール等を活用し、正社員への転換の本人の意向を確認し、その意向に配慮しなければなりません。
  • 転換のための制度を設けるにあたっては、複数の措置を併せて講じることが望ましいです。

パートタイム・有期雇用労働法(第13条)

事業主は、正社員への転換を推進するため、その雇用するパートタイム・有期雇用労働者について、次のいずれかの措置を講じなければならない。

・正社員を募集する場合、その募集内容を既に雇っているパートタイム・有期雇用労働者に周知する。
・正社員のポストを社内公募する場合、既に雇っているパートタイム・有期雇用労働者にも応募する機会を与える。
・パートタイム・有期雇用労働者が正社員へ転換するための試験制度を設ける。
・その他正社員への転換を推進するための措置を講ずる。

⑥ 待遇差についての説明方法

パート・有期雇用労働者から「正社員との待遇の相違内容やその理由」について説明を求められた場合、以下のいずれかの方法で説明する必要があります。

  1. 資料を活用し、口頭により説明する方法
  2. 説明すべき事項をすべて記載した、短時間・有期雇用労働者が容易に理解できる内容の資料を交付する等の方法

口頭での待遇説明を行った場合、説明に用いた資料を実際に交付することが望ましいとされています。また、資料の交付が困難な場合であっても、事後に労働者から求めがあった際は、その資料を閲覧させる等の工夫をするよう努める必要があります。

なお、労働者から説明の求めがない場合であっても、労働契約の締結・更新時等に待遇相違の内容等に関する分かりやすい説明資料を自主的に交付することや、説明を求めることができる旨をあらかじめ周知することが望ましいともされています。

ガイドラインでも繰り返し求められていますが、労働者へ説明する際、抽象的な説明ではなく、手当等の待遇の趣旨目的を明確にした具体的な説明ができるよう対応する必要があります。

⑦ 労使の話し合いの促進のための方法の工夫

就業規則の改定などの場面に限らず、定期的に労働者との話し合いの機会を設けたり、アンケートを実施したりするなど、パート・有期雇用労働者から意見を聴くための適切な方法を工夫するよう努める必要があります。

⑧ 雇用管理の改善等に関する情報の公表

自社が導入している正社員への転換制度の内容やこれまでの転換実績等の情報を、パート・有期雇用労働者に分かりやすく明示するよう努めるとともに、自社ウェブサイト等で定期的に公表することが望ましいとされています。

最後に

令和8年10月の法改正は、労働条件通知書のひな形更新といった「書類上の変更(雇入れ時の明示)」、手当や休暇の基準見直しが必要となる「ガイドライン改正への対応」、そして日常の評価や説明、対話を規定する「雇用管理指針の順守」まで多岐にわたります。

まずは、もっとも実務に影響を与える「労働条件通知書の様式見直し」と「不合理な待遇差がないかの確認」から着手しましょう。

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