言行一致と採用選考
そもそも、面接で人を見極めようとしている時点で、「本質」を見誤っていると思う。
面接は、人を判断する場としてはあまりに脆弱です。
なぜなら、面接で観られるのは相手が「話していること」や「書いていること」、つまり「言」だけだから。
本当に大事なのは「行」、つまり行動。
「行動そのものが、その人そのものを映し出す」
この原理原則をまずしっかりと頭にたたきこまないと、簡単に人はだまされてしまう。
私自身も散々騙されて辛酸をなめてきました。
もし世の中の人が全員、言行一致であれば、面接で人を判断することに何の問題もない。
でも、周囲を見渡してみてほしい。これまで採用してきた人を思い返してみてほしい。
言行一致の人はどれくらいいましたか?
そして、自分自身はどうでしょう?
約束をすべて守っていますか?
誠実であり続けていますか?
メールひとつ、返信を後回しにしてしまったり、不義理をしてしまったりしたことはないですか?
言行一致の人は、実は「とても」少ない。
なぜなら、人は本能的に自分の弱みを隠し、自分をよく見せたいと思ってしまうからだ。
応募者も同じです。面接の場では、どうしても自然体ではいられない。
「立派に見られたい」「優秀と思われたい」「認められたい」「褒められたい」という気持ちが働く。
そうすると、自然と「よそゆき」の振る舞いになる。
余談ですが、介護業界のよくある話でいえば、要介護認定の場面があります。
行政の担当者が訪問をしたとき、本来は日常生活でできないことを、本人が頑張って「できるように見せてしまう」ことがあります(うちの父もそうでした)。
これは、恥ずかしさやプライド、見栄といった人間心理によるものです。
そう。自分でも気づかないうちに、「不自然な言葉や仕草をしてしまう」ものなのです。
だから、面接では「本当の姿」を観ることが難しい。
観られるのは、言行一致の「言」が中心で、「行」は限りなく少ない。
ちょっとした態度や所作から何かを読み取ろうとしても、それが本質であるとは限らない。
むしろ、間違った判断をしてしまうリスクのほうが高いのです。
面接には、人を見極める機能がない。
このことを認識することが、採用選考を変えるための第一歩です。
この事実を認識できなければ、採用はいつまで経っても感覚や印象に頼るような属人的で、運任せなものになるでしょう。
それは数百もの会社を顧問社労士という立場で見てきたからこそ、間違いのない「実態」です。
そして、認識したとしても行動に移せなければ、結局は何も変わらない。
では、どうすればいいのか。
答えはシンプルです。
「言」ではなく、「行」を観察する仕組みをつくること。
そのための有効な手法が、「心理学に基づく行動分析手法であるアセスメントセンター」です。
応募者の行動そのものを、意図的に無意識領域に負荷を掛けることで、短時間で行動特性を引き出す。
それをプロのアセッサー(分析者)が観察し、再現性のある技術で評価(アセスメント)していく。
言葉ではなく「行動」で見極めることが、採用の精度を大きく変える。
だからこそ、面接に依存する採用から、「行動」を観る採用へと変えていく必要がある。
真面目で信頼できる(言行一致の)人材を採用したいのであれば、「言」に頼るのではなく、「行」を観るべきです。
