年次有給休暇への理解を深める
年次有給休暇の取得状況は事業所によってもさまざまです。
人手不足に悩んでいる事業所が多い状況では、社員も取得する余裕などありません。
一方、年次有給休暇の取得が進んでいる事業所、もしくは可能な事業所は社員にも一定のゆとりがあり定着率も高い傾向にあるようです。
しかし、休暇の取得が定着率を上げるというものではなく、経営者の的確な戦略による収益向上とその収益向上による「生活に困らない程度の待遇改善」、「他社と比較して好条件の採用」、「質の良い人材の採用による経営の効率化」が年次有給休暇を取得できる労働環境を構築して定着率アップに繋がっていると感じます。
年次有給休暇の付与要件
年次有給休暇の要件は、
- 6か月以上の継続勤務
- 直前の年次における全労働日の8割以上出勤
です。
これは、入社後、最初に付与しなければならないのが6か月間の継続勤務後ということですので、労働基準法の原則では、2回目以降の付与日は入社日から1年6か月後、2年6か月後と1年毎になります。正社員における最低付与日数は下記のとおりとなります。

週所定労働時間が30時間未満のパートタイマーは、その勤務日数に応じて比例付与されることになります。
その際の最低付与日数は以下のとおりです。

全労働日の8割以上出勤とは6か月の所定勤務日数が126日(毎月平均21日勤務)とすれば、126日×80%=100.8日となり、101日以上出勤することによって入社してから6か月後には年次有給休暇が付与されます。
換言すれば、6か月間で25日欠勤(月平均約4日)したとしても年次有給休暇が付与されるため、余程のことが無い限り年次有給休暇が付与されると考えて良いでしょう。
※来年の国会では見送りになりましたが、この8割出勤については議論されているところなので、変更される可能性は十分にあるでしょう。
年次有給休暇の時効
年次有給休暇は付与されるといつまでも取得利用可能というわけではありません。
時効があるため、付与した日から「2年間」で消滅します(労基法第115条)。
就業規則の規定をチェックしている際に、「次年度に限り繰り越すことができる」という文言を目にしますが、次年度の最終期日が2年の時効に到達していない可能性も入社時期によっては発生するため、時効を就業規則に規定するのであれば「年次有給休暇の有効期間は、付与日から2年間とする」として下さい。
年次有給休暇取得時の賃金
職員が年次有給休暇を取得したときの賃金は以下の3パターンから選択することができます。就業規則等に選択した方法を定めて下さい。
①平均賃金
②通常の賃金
③健康保険の標準報酬日額
1日の労働時間が明確に定められている正職員やパートタイマーは②を選択することで問題はありません。
労働時間が変則的なパートや登録型非常勤ヘルパーは①の平均賃金を採用することが多いでしょう。
また、月給以外の平均賃金は次のA(基本的な計算方式)やⓑ(最低保障額)によって算出された金額の「高い方の額」となるため、事務手続きが煩雑になります。
雇用契約形態によって、支払い方法を変える場合は、就業規則等に明確に定めておきましょう。
◆A(基本的な計算方式)

◆B(最低保障額)

※賃金総額は、臨時に支払われた賃金や3か月を超える期間ごとに支払われる賃金を除きます。
対象となる賃金は基本給、各種手当(通勤手当含む)、時間外・休日・深夜勤務手当となります。
◆例:月給制の社員
前提条件
・月給 275,000円
・通勤手当月額 6,330円
・賃金締切日は毎月20日
・事由発生日:6月29日
⇒ 直前の賃金締切日=6月20日から遡る3か月間
| 対象期間 | 暦日数 | 金額 |
|---|---|---|
| 3/21〜4/20 | 31日 | 281,330円(275,000+6,330) |
| 4/21〜5/20 | 30日 | 281,330円 |
| 5/21〜6/20 | 31日 | 281,330円 |
| 合計 | 92日 | 843,990円 |
計算
平均賃金 = 843,990円 ÷ 92日 = 9,173円80銭(銭未満切捨て)
ご相談の多い「退職前の年次有給休暇消化」
社員が「退職前に年次有給休暇を全部消化してから辞めたい」といってきたらどのような対応を取りますか?
結論から言えば、社員職員が申し出ているのであれば与えざるを得ません。
本来、年次有給休暇制度は、労働者に休養を与え、その後の職務にまい進してもらうという趣旨があるため理不尽に感じる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、退職予定日を超えて使用者の時季変更権(指定された年休取得日を変更する権利)を行使することはできないため、社員の指定通りに認めざるを得ないのです。
このような退職前の年次有給休暇消化は事業所にとってマイナス以外何物でもありません。給与の発生に加えて、社会保険料の負担も生じます。したがって、労働者の合意を得ることができるのであれば、退職前の年次有給休暇の買取り※は有効な手段です。
労働者にとっても、退職前の年次有給休暇消化を再就職先に伝えずに済むということは、悪印象を与えなくて済むというメリットがあります。
小規模事業所においては、年次有給休暇の対応には苦慮するところがあるかもしれません。しかし、退職前に年次有給休暇を取得させたり、買い取ったりするのではなく、元気に働いてくれているうちに計画的に年次有給休暇を与え、心身ともにリフレッシュしてもらう方法が一番健全であると思います。
