【法改正情報】労働条件明示のルールが変わります
Noppo社労士事務所のHottaです。
来年の令和6年4月から、労働条件の明示のルールが変わることをご存知ですか?
10月に厚労省から新しいパンフレットも公開され、具体的な変更内容が見えてきました。今までの明示事項からガラリと変わるものにはならないようですが、ほとんどの方に影響のある変更ですので、どこが変わるのか確認していきましょう!
変更点は大きく分けて3つあります。
全ての労働者が対象となるものと、有期契約労働者のみが対象となるものがあるので、それぞれ見ていきましょう。
すべての労働者が対象となる明示事項
①就業場所・業務の変更の範囲の明示
就業場所・業務の変更の範囲の明示は、全労働者との労働契約締結時(有期契約労働者は更新時も含む)に必要となります。
そもそも、就業場所・業務の内容については、「就業の場所および従事すべき業務に関する事項」としていわゆる絶対的明示事項(書面の交付での明示が必要となる事項)になっています。ただ、今までは雇い入れ直後の業務や就業場所を記載するだけでも問題なかったのですが、今後はそれだけでなく、変更後の範囲、つまり他にどこで・どのような業務をするのか、その範囲も書面で明示しなければならないのです。
しかし、従事する可能性のある就業場所・業務内容を全て列挙するとキリがないので、現実的には内容を限定しない書き方になります。
実際に厚労省のパンフレットでも、変更の範囲の例に「会社の定める場所」「会社の定める業務」「会社内での全ての業務」などが記載されています。この書き方であれば、これまでとほとんど変更はありませんよね。ただ厚労省は、「できる限り就業場所・業務の変更の範囲を明確にするとともに、労使間でコミュニケーションをとり、認識を共有することが重要」と添えています。
また、変更の範囲には、一時的に就業場所や業務が変更となる場合(※)は含まれませんので、明示する必要はありません。
※一時的な変更の例)臨時的な応援業務、出張、研修 等
他にも、有期契約労働者の場合は、次の契約更新後の就業場所・業務までは明示が求められておらず、あくまでもその契約更新の期間中における変更の範囲を明示すれば足りることとなります。例えば、令和5年10月1日から令和6年3月31日までの6か月間の契約期間で契約を締結する際に、明示しなければならないのは令和5年10月1日~令和6年3月31日の期間中の就業場所・業務であり、令和6年4月1日以降の契約期間中に就業場所・業務が変更となる可能性があっても、そこまでは明示を求められていないということです。
有期契約労働者のみが対象となる明示事項
②更新上限の明示と更新上限の新設・短縮の説明
ここからは有期契約労働者のみが対象となるルール変更です。そのため、有期契約労働者の締結と契約更新をするタイミングで、毎回明示する必要が出てきます。
一つ目は、有期労働契約の通算契約期間や更新回数の上限などの、更新上限を書面で明示する点です。
更新上限を設ける場合には「契約期間は通算4年を上限とする」「契約の更新回数は3回まで」などと明示します。上限がない場合にはその旨を明示する必要はありません。
そしてもう一つ、更新上限を新たに設ける場合、または更新上限を短縮(※)する場合に、その理由をあらかじめ労働者に説明しなければなりません。
これは「あらかじめ」ですので、「更新上限の新設・短縮する前のタイミング」で理由を説明する必要があります。
※更新上限の短縮の例:通算契約期間の上限を5年から3年に短縮する。/更新回数の上限を3回から1回に短縮する。
説明する方法としては、「文書を交付して個々の有期契約労働者ごとに面談等により説明を行う方法が基本」とされていますが、説明すべき事項をすべて記載した資料を交付する、複数の有期契約労働者に対して説明会を行うなども差し支えないとされています。
ただ、理由を「どこまで説明すればいいのか」については、厚労省も明確にしておらず、理由の事例もほとんど記載されていないため、議論の余地がある状況です。
③無期転換申込機会・転換後の労働条件の明示
最後は、無期転換申込機会の明示と転換後の労働条件の明示です。
そもそも、有期契約労働者の無期転換ルールについて、ご存知でしょうか?
無期転換ルールは、不安定な働き方である有期労働契約を無期労働契約に変更することで、安定化につなげる目的でつくられたルールです。同じ使用者のもとで、通算5年を超えて契約を更新した際に、有期契約労働者の申込みによって、無期労働契約に転換されます。使用者は、申込みがあった場合には、それを拒むことはできません。
出典:厚労省<https://muki.mhlw.go.jp/business/>
ただ、このルールはあまり活用されていないのが現状です。明示することによって、今の状況を変えるべく今回の改正がありました。
4月以降は無期転換申込権が発生する有期契約労働者に対して、無期転換を申し込むことができる旨、また無期転換後の労働条件を明示しなければなりません。
これは、無期転換申込権が発生した最初の契約更新時(上図オレンジの契約期間への更新時)に明示するだけでなく、申込みがなかったとしても、権利を持つ限りは契約更新の度に、申込機会および転換後の労働条件、この2点を明示しなければなりません。
「権利を持つ限り契約更新のときは毎回」ですので、仮に有期契約労働者が無期転換申込権を行使しない旨を表明しても、権利が消えるわけではありませんので、毎回明示が必要となります。
また、努力義務ですが、無期転換後の労働条件を決定するにあたって、他の通常の労働者とのバランスを考慮した事項について、有期契約労働者に説明するよう努めることが求められています。
下記は厚労省がモデル労働条件通知書として公開しているものです。就業場所・業務の変更範囲、更新上限、無期転換について記載例が載っていますので、ご参考になさってください。
出典:厚労省パンフレット『2024年4月からの労働条件明示のルール変更 備えは大丈夫ですか?』
最後に
就業場所・業務の変更範囲については、かなり抽象的な記載も認められていますので、大きな影響はないかと思います。
ただ、無期転換など、該当する場合毎回明示が必要になるものもありますので、不足がないようきちんと把握し、明示するようにしましょう。
また、ルールが変更となるのは令和6年4月1日からですが、すでに契約を締結している分については、改めて明示する必要はありません。4月1日以降に締結するもの(有期労働契約の契約更新も含む)からは対応が必要となりますので、ご注意ください。
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