夜勤介護職の労務管理Q&A
当事務所の顧問先には夜勤に従事している介護職員さんが多いため、今後の備忘録としてまとめておきます。
夜勤の労務管理はちょっと複雑ではないでしょうか。出勤日数のカウント、有給休暇の消化日数、離職票作成時などなど。悩まれることが多いと思いますので、ぜひ参考にしてください。
原則
まずは、原則を理解しておきましょう。
・労働時間を計算する際の「1日」については「暦日」で考えるのが原則
・労基法39条の労働日は原則として暦日計算によるべき
・休日については、原則として暦日休日制(0時~24時)をとっている
夜勤時の出勤日数のカウント方法とは?
厚生労働省労働基準局長による通達で、
「継続勤務が2暦日にわたる場合には、たとえ暦日を異にする場合でも1勤務として取り扱い、当該勤務は始業時刻の属する日の労働として、当該日の『1日』の労働とするものであること。」
とされています。ですので、日をまたいで勤務したとしても、「1労働日」としてカウントすることになります。
根拠は、以下の基発です。
昭和63年1月1日 基発1号
労働時間を計算する際の1日についても上記のとおり暦日で考えるのが原則ではありますが、労働時間を暦日で捉えてしまうと、深夜0時を境に労働時間が一旦リセットされてしまい、割増賃金が支給されないという労働者にとって不利益な状況になってしまいます。ですので、1労働日として取り扱うということになっているのです。
ただ、逆に、有給休暇の付与日数をカウントするときには、労働者にとって不利益な方向に働いてしまいます。週30時間以上働くのであれば、週5日働く人と同等の日数が付与されるため気にする必要はありませんが、月に2~3回程度の夜勤しかしない・・ということになると、1年間の所定労働日数も24日~36日ということになり、「有給休暇付与の対象者にはならない」ということなります。
夜勤時の有給休暇の消化日数はどうなる?
労基法39条(年次有給休暇)に規定されている「労働日」は、原則として「暦日計算」によるとされています。したがって、夜勤者の場合「2日分の年次有給休暇の消化」となります。根拠は、以下の基収と基発です。
- 昭和26年9月26日 基収3964号
- 昭和63年3月14日 基発150号
※基収とは、厚生労働省労基局長が問い合わせの照会に答えたものです。
週の労働時間が30時間以上となる夜勤従事者の有給休暇の付与日数は?
週の労働日数が短い場合の年休は比例付与ということになりますが、週の労働時間が30時間以上の労働者は比例付与の対象とならないため、正社員と同じ日数を付与することになります。週の労働日数が短いからといって、比例付与としないよう注意しましょう。
【根拠】施行規則第24条の3第1項
夜勤従事者の有給休暇取得時の賃金はどうなる?
年次有給休暇取得時の賃金の支払い方法は、以下の3パターンです。
①「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」を支払う
②「平均賃金」で支払う
③「健康保険法に定める標準報酬日額に相当する金額」で支払う
特別養護老人ホームやグループホームにおける夜勤であれば、毎回所定労働時間が異なるということは少ないかと思いますので、①を選択し所定労働時間分の賃金を支払えば問題になることはないでしょう。
1か月単位の変形労働時間制等を採用している事業所で、②を選択した場合、2日分の有給休暇を消化するということは、2日分の平均賃金を支払う必要があります。
※実際に働いていないため22時~5時の間の深夜割増賃金は不要です。
夜勤者の離職票作成時の注意点とは?
1回の勤務が2日にわたる業務で、労働時間が8時間を超えるときは、2日として賃金支払基礎日数をカウントします。2日にわたる業務であっても8時間以下の場合は、通常どおり1日としてカウントします。この場合の賃金支払基礎日数は、各月の暦日数を上限とします。
【根拠】雇用保険に関する業務取扱要領
夜勤者の算定基礎届と月額変更届
給与形態によって対応が異なりますので注意が必要です。
①月給者の場合:各月の暦日数を支払基礎日数とします。
②日給者の場合:給与支払の基礎となる出勤回数を支払基礎日数とします。
(変形労働時間制を導入している場合は③に準じて扱います。)
③時給者の場合:各月の総労働時間を事業所の所定労働時間で割って得た日数を支払基礎日数とします。
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