外国人を採用する前に知っておきたい基礎知識と実務ポイント 前編

こんにちは。Noppo社労士事務所のwatabeです。

最近は、町のいたるところで外国人が働いているのを目にします。コンビニやレストラン、現場の仕事など外国人労働者の存在なくして成り立たないのではないか、と思うほどです。

職種にもよるかと思いますが、実際に採用活動をした際に外国人が応募してくることも珍しくなくなってきているのではないでしょうか。

私はNoppoに入社する前、日本で流通する中古車を海外に輸出する会社で総務として働いていたのですが、当時は従業員の半数くらいが外国人だったので外国人の入退社の手続きや、在留資格に関する手続きも担当していました。
その会社に在籍していたことで「外国人と働く」ということについて知識だけでなく実体験として得たことが色々とあります。

当時と変わったことも多くありますが、外国人を従業員として迎える際の注意点などについて2回に分けてご紹介したいと思います!

外国人を雇用するにあたって避けては通れない用語

まずは大前提として、外国人雇用に際し絶対に必要な用語をご確認ください。

「ビザ」ってなに?

ビザ(査証)とは、日本に入国しようとする外国人が母国の日本大使館からうける、「この人は日本に入国しても問題ない」と判断された際に発給される推薦状のようなものです。「就労ビザ」と聞いたことがあるかと思いますが、実は「就労ビザ」だけを発給されていても、日本で働くことはできません。日本の空港で入国審査官がビザを確認し、それに見合った在留資格が付与されることで、日本で働くことができます。

「在留資格」ってなに?

在留資格とは日本への入国の際に、入国・在留の目的に応じて入国審査官から与えられる資格のことです。外国人はこの「在留資格」の範囲内でのみ活動することができます。つまり、在留資格の種類によって就ける仕事が限られるということになります。

「在留カード」ってなに?

日本に3か月以上在留する外国人に対して発行されます。外国人の身分を証明するカードで、氏名・生年月日・国籍・住所・在留資格・在留期間などが明記されていて、日本に在留する間はパスポートの代わりに在留カードを携帯する義務があり、不携帯の場合は罰金刑が課せられます。

日本の大きな国際空港(成田・羽田・関空・中部など7空港)は、入国と同時に在留カードを受け取ることができるので、日本に3か月以上在留する多くの外国人が入国した時から在留カードを携帯していることになります。

「在留期間」ってなに?

在留資格は付与されたときに期限(在留期間と言います)が定められており、その期間内に限って在留を認められます。そのため、在留期間を超えて引き続き在留しようとする場合には、在留の期限までに在留期間の更新許可申請を行う必要があります。
※在留期間を1日でも過ぎてしまうと、「不法在留(Over stay)」ということで、強制的に帰国ということもあり得ます。

こんなイメージです

説明されても分かりにくい…という方は、【日本で働くことができる=公道を運転することができる】と置き換えて考えてみてください。
運転免許を持っている方であれば想像しやすいかと思います!

◇就労ビザ◇
自動車学校で「この人は公道を運転するのに問題ありません」と卒業のハンコを貰うこと
卒業しただけでは実際に公道を運転することはできません。

◇在留資格◇
公道を運転できるのは自動車学校で勉強した車種(普通自動車・大型自動車・小型二輪など)のみに限定されること
取得した免許の範囲でしか運転することはできません。

◇在留カード◇
運転免許証
不携帯で運転すると罰金刑があります。

◇在留期間◇
運転免許証の有効期限
更新期限を過ぎてしまうと失効となり無免許運転=罪に問われることになります。

採用前に企業が気を付けなければならないこと

それではいよいよ、外国人を採用する前に気を付けなければならないことについて説明いたします。

面接

まずは必ず「在留カード」を確認してください。

先ほどもお伝えした通り、在留カードは日本に住む外国人の身分を証明するカードです。

法務省ホームページより

日本人が面接に来た時に身分証明書を確認することはあまりないと思うので身分証明書を提示させることに違和感がある方もいるかと思いますが、この確認を怠ったことで後々「不法就労」や「不法滞在」につながる可能性もあります。
躊躇せず、必ず確認してください。

確認すべき項目は【在留資格】と【在留期間】です。
両方とも、在留カードの表面に記載されています。

在留資格の確認

上記で述べたように、外国人は在留資格の範囲内でのみ働くことができます。つまり、在留資格を確認することで「その人が何の仕事に就くことができるか」を判断することができます。

まず最初の確認事項は「就労することができる在留資格なのか?」です。


【就労に制限がない在留資格】
・永住者
・日本人の配偶者等
・永住者の配偶者等
・定住者
この4つの在留資格を保有している場合は、就労に制限がありませんので安心してください。日本人を雇用するのと変わりません。

☆要注意☆
応募してきた外国人が「私は日本人と結婚しています」と言ったからと言って、本人の在留資格が「日本人の配偶者等」だとは限りません!必ず自分の目で在留資格を確認してください。


【就労できない在留資格】
・留学
・家族滞在
研修
・文化活動
・短期滞在
という5つの在留資格は原則的に就労することができません

「あれ?でも外国人の留学生ってアルバイトとかしてない?」と思った方もいるかと思います。
そうです、原則的に就労することができない在留資格の方でも、就労できる方法があるんです!

それは、入国管理局に申請し「資格外活動(在留資格で認められた活動以外の収入・報酬を受ける活動)」の許可をもらうことです。資格外活動許可を貰うと週に28時間まで就労することができます。許可を受けると在留カードの裏面に資格外活動許可の有無が記載されます。なぜ週28時間までしか働けないのか?というと、そもそもその人本人が「就労すること」を目的に日本に入国していないため、本来の在留資格の目的から逸れないために就労に制限があります。
※ただし、「留学」の在留資格は夏休みなど長期休暇中であれば、1日8時間(週40時間)以内で働くことが可能です。

資格外活動許可の有無については、在留カードの裏面(下部)に記載がありますので必ず確認してください!

法務省ホームページより

☆要注意☆ 自分の会社では28時間以内で働かせていたが、他にもアルバイトをしていて28時間を超えてしまう、という例もあります。雇用時には必ず他社で就労していないか確認が必要です。


【就労可能な在留資格】
就労可能な在留資格は現在19種類あります。
「技能実習」や「技術・人文・国際業務」などが特に付与されている人数の多い在留資格です。

以前は種類がもう少し少なかったのですが、日本の労働力不足や仕事の多様化などを鑑み、在留資格の種類は増えてきています。
ただ、先に述べた就労制限のない4つの在留資格と比べ基本的には「付与された資格外の活動」は認められていません。

例えば日本の学校などで英語を教えるには「教育」の在留資格が必要です。この資格は「学校」でしか働くことができません。一方、民間の語学学校や英会話教室の講師は「技術・人文・国際業務」の資格内の活動に含まれます。

そのため「教育」の在留資格を持っている外国人が英会話教室の講師として働くことは資格外での活動となり、「不法就労」に該当してしまいます。「英語を教える」という同じような職務内容であっても「どこで教えるか」によって不法就労になってしまう、という例があるように在留資格は厳しく資格内での活動が定められているので雇用する側も注意しなければなりません。


あれ?「資格外活動許可」の申請をすれば資格外の内容でも働くことができるんじゃないの?と思ったそこのあなた!
そうです、在留資格が「教育」の場合でも、「資格外活動許可」を受ければ民間の英会話教室でアルバイトをすることが可能になります。
このように、就労制限のある在留資格でも許可を受けることで資格外の活動が認められることもあります。
逆に言えば、この情報を知らずに資格外活動許可を受けていない人を採用してしまったときは、大きな問題に発展しかねません。

資格外での就労をしてしまった外国人はもちろん、雇用した側も「不法就労助長罪」に該当した場合は懲役や罰金刑が課せられますので、「知らなかった」では済まない、ということを理解し、慎重に採用活動を進めて欲しいと思います。

在留期間の確認

在留期間の確認も忘れずに行ってください。
期間の更新は在留期限内に申請をしなければなりませんので、期限までの期日が短い人を採用すると決めた場合はそれを考慮してスケジュールを組む必要があります。
また、在留期限が迫っている状態で採用した場合、入社予定日までに更新の許可が下りない可能性も十分にあり得ることを念頭においてください。
「期限が迫っている=応募してきた人も焦っている」ということが多いので、トラブルも起きやすい状況であることも理解が必要かと思います。

前編のまとめ

私が過去に実際に手続きをした中で、在留資格の変更や在留期間の更新で不許可になった方はいませんでしたが、更新の際に不許可になってしまい、いろいろと大変な思いをした外国人が知り合いにいます。

その人は入国してから数回更新していたのですが、入国した時とは違う会社に転職してから次の更新の際に「大学で学んだ内容」と「実際に就いている業種」が違う、という理由で不許可になってしまいました。その話を聞いたときは、自分が今まで申請した人のことを正直そこまでしっかりと把握していなかったので、入管ってそんなに詳しく調べていたんだ…と正直少し怖くなったことを覚えています。

更新やビザの変更も慣れていない人が行うには多少難しい部分もあるかと思いますが、特に自社で働いてもらうために海外から呼ぶ(新たに就労ビザ・在留資格を取得する)のはとても多くの書類が必要になり、普段の業務として行っていない方がやるには負担がかなり大きく、また万が一不許可ということになってしまったときの雇用をどうするか?という問題も出てきてしまうため外国人の在留資格申請を得意とする行政書士さんに相談することをお勧め致します。

前半はここまでで終わりです。

後半(4月初旬に更新予定)は、「実際に雇用することが決まった時に必要な手続き等」についてお伝えする予定です!

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